こちらの記事では、自作キャンピングカーにおいて電気配線する際のケーブル径およびケーブル長の決め方や、ケーブルに取り付けるヒューズの選択・取り付け方法について詳しく解説していきます。
いざ電気配線するとなったとき、どれくらいの太さのケーブルを使うのがいいのか、ヒューズはつけた方がいいのか、ヒューズをつけるにしてもどこにどれくらいの容量のものをつけるといいのか、といった悩みを持ったことはないでしょうか?
本記事を読んでいただければそのような悩みを解決することができます。
適切なケーブルやヒューズを選択することは安全で快適なバンライフを送るためには必須ですので、こちらの記事で理解を深めていただき、実際の作業に活かしていただければと思います。
ケーブル選択の考え方
まずはケーブルの選択についてですが、基本的な方針はシンプルに考えると以下のようになります。
- 消費電力の大きい電化製品には太いケーブルを使う
- 配線が長い場合は通常より太めのケーブルを使う
- 上のどちらにも該当しない場合は取り回しの良さやコストの観点から細いケーブルを使う
太いケーブルほど大きな電流を安全に流せ、長い距離でも電圧降下が少なく済みます。そのため、消費電力の大きい電化製品や長い配線には太めのケーブルを選ぶと安心です。
一方で、細いケーブルは安価で、柔らかく狭い場所での取り回しがしやすいという利点があるので、電流量が少ない箇所には積極的に細いケーブルを使用していくことが望ましいです。
よって、安全性・効率・コスト・作業性のバランスをみて最適なケーブルを選択することが重要となります。
それでは、具体的にどれくらいの消費電力、ケーブル長に対してどの程度のケーブル径が最適となるのか説明していきます。
消費電力と配線の長さからケーブル径を決める
ケーブルの径は以下の手順で決めていきます。
- ケーブルにつなげる電化製品の消費電力を確認
- 電源から電化製品までどれくらいの長さのケーブルが必要か確認
- 下の早見表に消費電力・ケーブル長さを当てはめケーブル太さを決める

こちらの早見表では12V電源を使用することを前提として、消費電力から消費電流を割り出しています。
なお、こちらの早見表は私が独自に作成したものなのであくまで参考程度に留めていただき、他のウェブサイトに掲載されている早見表なども参考にしながら使用するケーブルを選択していただければと思います。(ただしこの早見表は適当に作成したわけではなく、他出展の早見表も参考にしつつ根拠のある計算に基づいて作成しております)
こちらの早見表のケーブル径がどのように決められたか導出を以下に記載しておきますので、よろしければ参考にしてみてください。
早見表内ケーブル径の導出
上の早見表は以下のような前提で作成しております。
・電圧の降下量は2%以下に抑える
12Vは低電圧のため少しの電圧損失でも機器の動作が不安定になることから、電子機器の動作不良や寿命低下を防ぐためにも電圧降下を2%以下に抑えるのが安全です。
つまり、電圧降下を2%に抑えることができるだけ十分太い径のケーブルはいくつなのか、という観点で早見表のケーブル径が決められています。
それでは、そのケーブル径を決めるために行った計算を以下に示していきます。(そんなに難しいことはしていないので、軽く眺めていただければ内容は理解いただけると思います)
まず、電圧降下”Vd“については、電流”I”とケーブルの抵抗”R”を使って次の式で表せます。
Vd=2IR ・・・①
※式の中の「2」は「往復分(+線と-線)」を意味します
一方で、抵抗”R”はケーブルの抵抗率”ρ”、ケーブル長さ”L”、ケーブル径”A”を使って次の式で表せます。(ケーブルが長ければ長いほど、そして細ければ細いほど抵抗は大きい)
R=ρL/A ・・・②
①式と②式を合わせると次のようになります。
Vd=2IρL/A
電圧降下を2%以内に収めるとすると、電源の電圧を”Vb“としたときに以下の関係式を満たす必要があります。
Vd=2IρL/A < 0.02Vb
銅線の場合は25℃で抵抗率が約0.0175 Ω·mm²/mなので”ρ=0.0175″、12V電源を使用するので”Vb=12″を代入し、Aについて式を整理すると以下のようになります。
A>0.1458IL ・・・③
つまり、早見表の中のケーブル径”A”は、③式に電流”I”とケーブル長さ”L”をそれぞれ代入して決められています。(実際に購入できるケーブル径のラインナップから適切なものを当てはめています)
ちなみに、電圧降下2%以下を推奨されるのは起動電流が大きく電圧に敏感なインバーターや冷蔵庫、エアコンなどに使用する場合や長距離配線を行う場合のようなのですが、キャンピングカー内の配線ということもあって安全側で設計したかったためすべてのケースに一律で「電圧降下2%以下」を適用して早見表を作成しました。
なお上記の計算は、以下のようなタイプのケーブルの使用を想定して行いました。
とにかく太いケーブルにしておけば問題ない?
基本的に大は小を兼ねるので太いケーブルを使用しておけば安心ではあるのですが、過剰に太くすると以下のようなデメリットもあるため、基本的には早見表で当てはまるケーブル径を選択することをおすすめします。(早見表内のケーブル径であれば十分安全な選択になるので)
① 取り回しが悪くなる
ケーブルが太いほど硬く、曲げにくくなります。車内配線や狭い場所では配線作業が難しくなり、
端子部への接続(圧着・ハンダ)もやりにくくなります。
② 重くなる
太いケーブルは重量が大きいため、配線の数が多いと車が重くなってしまいます。
③ コストが上がる
銅線の価格は断面積に比例するため、太いケーブルを使用するとコストが上がってしまいます。また、ケーブルを太くするとそれに伴って端子類・ヒューズなども高くなります。
結論
ケーブルは使用する電化製品や長さに応じて適切な太さのものを使用することで、安全かつ安価にすることができるため、早見表にあるようなケーブル径を選択するようにしましょう。
実際、個人で配線しようと思うと38sqくらいのケーブル径が取り回しの限界となってくるので、消費電力の大きい電化製品に対してはできるだけ短い配線をして太いケーブルを使用せずに済むようにしましょう。
参考までにですが、実際に私が作業した際には、太いケーブルのカットとかしめに対しては以下の道具を使用しました。(38sqのケーブルが限界)
ヒューズ取り付けの考え方
ヒューズの必要性
ヒューズの必要性についてはご存知の方が多いとは思いますが、簡単に説明をしておきます。
ヒューズは電気回路を守るための安全装置です。ヒューズ内の細い金属線は通常使用の電流では問題なく電気を通しますが、ショートや故障などで想定以上の電流(過電流)が流れると、熱で溶けて回路を遮断します。これにより配線や機器の焼損、火災を防ぐことができます。ヒューズが切れたときは、どこかで異常が起きたサインでもあるため、交換するだけでなく原因を確認することが大切です。車や家庭用電気製品などさまざまな機器に使われており、安全に電気を使うために欠かせない存在です。
ヒューズの大きさの決め方
基本的には、以下の関係が成り立つようにヒューズを選択することになります。
消費電流 < ヒューズ容量 < ケーブル許容最大電流
「消費電流 < ヒューズ容量」については、もしヒューズが消費電流よりも小さなものを使用していたとすると、普通に電化製品を使用しているだけでヒューズが切れてしまい電気が使用できなくなってしまいます。そのため、必ずヒューズ容量は定格消費電流を上回る必要があります。
「ヒューズ容量 < ケーブル許容最大電流」については、もしヒューズ容量がケーブル許容最大電流よりも大きかった場合、ケーブルに許容を超えるほどの大電流が流れたときにヒューズが切れないまま電流が流れ続け、ケーブルが燃えて火災になる危険性があります。
以上より、ヒューズ容量は「消費電流 < ヒューズ容量 < ケーブル許容最大電流」を満たすように選択する必要があります。
では、ヒューズ容量は具体的にどれくらいの大きさにすべきか見ていきましょう。
ヒューズ容量の選定目安
ヒューズ容量は、機器の定格消費電流の1.25~1.5倍程度を目安に選定するとよいと言われています。これは、機器が起動する際や負荷が変動する際に一時的に流れる「突入電流」でヒューズが誤って切れるのを防ぐためです。
ただし、インバーターやエアコンなどの突入電流が大きい機器の場合は、ヒューズ容量を1.5倍〜2倍程度に設定するか、遅断型ヒューズを使うようにしましょう。
※一方で、必ず「ヒューズ容量 < ケーブル許容最大電流」の関係が守れているか確認しましょう
基本は速断型ヒューズでOK
突入電流の大きい機器に対しても使用ができる遅延型ヒューズですが、万能ではなく以下のようなデメリットがあります。
- 価格が高い(標準型より1.3〜3倍)
- 入手性が良くない
- LED照明・基板・USB電源などの過電流に対して一瞬で壊れてしまう機器に対しては、遅延型だと壊れるほどの電流を通してしまう可能性がある
そのため、突入電流が小さい機器には速断型(ふつうのヒューズ)を使用し、突入電流が大きい機器のみ遅延型(もしくは1.5~2倍程度の容量の速断型)の使用を検討するようにしましょう。
ヒューズの取り付け位置
ヒューズはできる限り電源(バッテリー)近くに取り付けるのが安全です。できればバッテリー端子から10~30cm以内を目安に取り付けるようにしましょう。
なぜバッテリー近くに取り付けるのかというと、バッテリーからヒューズまでの間の配線はヒューズに守られないためその部分をできるだけ少なくしたい、というのが理由となります。
このヒューズに守られない配線区間については、配線が擦れて金属部分(ボディ)に接触しショートしたりした時もヒューズが切れず、配線が溶けたり燃えたりする危険性があります。
よって、ヒューズはできる限りバッテリー近くに取り付けることを意識しましょう。
ヒューズに関するまとめ
安全性を確保するために、以下のことを考慮してヒューズを取り付けるようにしましょう。
- 消費電流 < ヒューズ容量 < ケーブル許容最大電流の関係を守る
- 突入電流の小さい機器の場合、ヒューズ容量は消費電流の1.25~1.5倍程度を確保
- 突入電流の大きい機器(インバーターやエアコンなど)の場合、ヒューズ容量は消費電流の1.5~2倍程度を確保する、もしくは遅延型ヒューズの使用を検討する
- ヒューズはできるだけ電源の近くに取り付ける
余談ですが、この2000Wインバーターには250Aヒューズを取り付けることがメーカーで推奨されています。250Aヒューズは定格消費電流の1.5倍の容量となるので、上記の考えと整合していますね。
まとめ
本記事ではキャンピングカー配線におけるケーブルとヒューズの選択の仕方について紹介しました。
安心で快適なバンライフを送るためには、安全性が確保された電気配線が必須となります。自分で電気配線作業をされる方は適当にケーブルやヒューズを取り付けるのではなく、本記事などを参考にして十分に安全に配慮して作業をされるようにしてください。

